メジャーリーグで前人未到の「二刀流」を成功させ、野球界の歴史を塗り替え続けている大谷翔平選手。彼が投打両方でグラウンドに立ち続けることを可能にした、通称「大谷ルール」をご存知でしょうか?
この記事ではDH制の基本的な仕組みから「大谷ルール」との決定的な違い、そしてそのルールが生まれた背景や日本での導入状況まで分かりやすく解説していきます。
DH制(指名打者制)とは?
まず、比較対象となるDH制(指名打者制)について、その基本を押さえておきましょう。DH制は投手の打撃負担を軽減し、試合の攻撃力を高めることを目的として導入されたルールです。
具体的には投手の代わりに打席に立つ専門の打者「指名打者(Designated Hitter)」を置くことができ、指名打者は守備にはつきません。攻撃の時のみに参加をします。指名打者は、守備につく投手を除く他のポジションの選手と同じようにチームの打順に組み込まれ、打撃に専念します。
このDH制の大きな特徴は、以下の2点です。
投手の打席を打者が代行する
投手は守備と投球に専念できます。これにより投手の怪我のリスクを減らし、打撃に長けた選手を起用することで攻撃の幅が広がります。指名打者として打撃専門の選手を起用することで投手は打席に立つ負担がなくなり、チームは打線のつながりを強化できるので非常に良いです。
一度DHを解除すると元に戻せない
DHを置いたチームが途中で投手が打席に入るためにDHを解除した場合、その後はDHの役割が失われその試合ではDHを再び置くことはできません。また、一度DHとして出場した選手は守備位置につくことはできない事になっていました。
これらのルールはアメリカン・リーグ(ア・リーグ)を中心に長年採用されており、日本ではパシフィック・リーグ(パ・リーグ)が導入しています。
「大谷ルール」とは?
2022年、メジャーリーグ(MLB)で正式に導入された通称「大谷ルール」は、DH制の概念を覆す革新的なものです。正式名称は「投手として先発出場した選手が、降板後もDHとして出場できるルール」と言います。
このルールの誕生は、大谷翔平選手の「リアル二刀流」がもたらした必然的な変化でした。従来のDH制では、大谷選手が「投手兼DH」として出場した際、投手として降板すると、同時にDHの打順も消滅し、打者としても交代せざるを得ませんでした。しかし、「大谷ルール」が適用されると、この状況が一変します。
先発投手がDHを兼務でき、降板後もDHとして打席に立てる
試合開始時に「投手兼DH」として出場する選手は、そのまま打順に残り続けます。その為、投手としての役目を終えてマウンドを降りた後も指名打者としてそのまま試合に出続けることが可能になります。このルールの最大のポイントは、「投手とDHの役割を分離する」という点です。これにより、大谷選手のように投手としても打者としても突出した能力を持つ選手がどちらかの役割を終えた後も試合に残り、チームの勝利に貢献し続けることが可能になったのです。
大谷ルールは、二刀流選手の能力を余すことなく発揮できる
従来のDH制が投手の打席をなくすためのものだとしたら、大谷ルールは「両方の役割を最大限に発揮し続けられる」ためのルールと言えるでしょう。大谷ルールという名前の通り、大谷選手を有効活用するためのルールとも言えますね。
「ずるい」って噂は本当?
「大谷ルール」は、一部で「大谷選手だけを優遇するずるいルールなのでは?」という声も聞かれました。しかし、このルールが導入された背景を理解すればその評価は変わってくるはずです。
このルールの正式な目的は、「投打の二刀流を可能にする選手の出場機会を確保する」こと。大谷選手のような突出した才能を持つ選手は、野球界全体にとっても稀有な存在です。これは時代に合わせたルールの進化と捉えるべきでしょう。
ただ、このルールには以下の様に賛否両論があることを理解しておきましょう。
肯定的な意見
- 二刀流という稀な才能を持つ選手の活躍を促す。
- 試合展開に新たな戦略性をもたらし、ファンを魅了する。
- 大谷選手の怪我のリスクを減らし、長期的な活躍に繋がる。
という意見が挙がっています。
否定的な意見
- ルールが特定の選手のためだけに作られたように見え、公平性を欠く。
- DHを交代させないことで、代打などの起用戦略が減る可能性がある。
このような意見も挙げられていました。しかし、結果としてこのルールはMLBの試合に新たな魅力を加えることに成功し、多くのファンに受け入れられました。
特にメジャーリーグの近代野球において、大谷ルールがもたらした戦略的な影響は計り知れません。
日本プロ野球(NPB)にもDH制は導入された?
「大谷ルール」はメジャーリーグだけでなく、日本プロ野球(NPB)にも導入されています。
2023年シーズンからNPBは野球規則を改正し「先発投手が指名打者(DH)を兼ねることを認め、かつその選手が投手として降板した後もDHとして試合に出場し続けられる」という新ルールを適用しました。
これにより大谷選手のような二刀流選手が日本で生まれた場合も、DHを解除することなく打者として試合に残り続けることが可能になりました。
セントラル・リーグ(セ・リーグ)でもDH制が導入決定
NPBでは2027年シーズンからセントラル・リーグ(セ・リーグ)がDH制を導入することが決定しています。これによりパ・リーグとセ・リーグのルールが統一され、より公平な形で交流戦や日本シリーズが行われることが期待されています。セ・リーグでのDH制導入の話題は、DH 大谷ルールの登場によってさらに活発な議論を呼ぶことになりました。
まとめ
この記事ではDH制と大谷ルールの違い、そしてその背景にあるストーリーを解説しました。このルールも大谷翔平選手という歴史的才能が野球界にもたらした必然的な変化でした。
このDHと大谷ルールは特定の選手を優遇するものではなく、野球というスポーツをさらに発展させるための変化として受け止められています。
今後日本でも大谷選手のような二刀流選手がさらに誕生し、このルールが活用される日を楽しみに待ちましょう。








